自転車操業一筋42年

世の中の「意識高い系」トライアスリートについていけない泳ぎがヘタで意志が弱いサラリーマン、永遠の42歳後厄、が初フルマラソン完走後3年でアイアンマン70.3のフィニッシャーに。フルマラソンサブ4達成後の次の目標はOD3時間切りです。

海で溺れてトライアスロンを辞めた話

10年近く続けてきたトライアスロン。20回ほどの試合でこれまで一度も途中棄権したことはなかったのですが、レース本番中手足が痺れて泳げなくなり、海で溺れてライフセーバーの乗ったジェットスキーに助けられ、岸に引き上げられるという体験をしました。去年の6月の宮崎シーガイアトライアスロンでの出来事でした。

 

コロナ後復帰第一戦だったので、タイムはともかく久々なので完走すればいいや、とさほど気負いもなく出場しました。浜から逆正三角形状の750mを2周するコースで、最初の1辺は足がつくぐらいの深さ。もう何度も出ているので勝手知ったるコースです。海の透明度はいつも通り低く前が見えないので泳ぎにくいのですが、波も大したことはなく、絶好のトライアスロン日和でした。

 

スタート後泳ぎ始めてすぐになんとなく違和感があって、でも大丈夫だろうと思って250mほど泳いでいるうちに手が痺れてきました。ウェットスーツ着て浮力があるので、最悪空を向いて大の字に寝ていれば溺れることはないのですが、「そんな調子悪くなるはずはない、大したことないだろう」と思って再び泳ぎ始めると、今度は手だけではなく足も痺れてきて体が言うことを聞かなくなってきました。

沖に出て休みながらだましだまし泳ぎ、なんとか1500m泳ぎ切ってしまいたいと思っているうちに、レースの先頭集団が2周回めに入って周回遅れの私の周りをかなりのスピードで泳ぎ始めます。海の中でスピード差のある集団に後ろから追い上げられるのは調子悪くなくてもかなりのプレッシャーです。ゆっくり泳ぎたくて平泳ぎでもしようものなら速いスイマーの進路の邪魔になるので、最悪、後ろから足を掴まれたり、頭を蹴られたりすることもあります。こちらも邪魔にならないようになんとか進もうと悪戦苦闘していました。

とりあえず1周回終えて「2周回目をスキップします」といえば、公式記録は出ませんがバイクとランには参加できるのは知っていたので、なんとか泳ぎ続けようと思っていました。コースロープに捕まって休んでいたらライフセーバーの人が寄ってきてくれて「もう少し泳げばスキップできるぞ」と励ましながら目を見て安否の確認してくれたので「大丈夫です」と答え、自分でも「こんなところで棄権してる場合じゃないだろ、今まで棄権せずにずっとやってきたんだから」と自分に言い聞かせながら少しずつ前進していました。ですがそのうちに体が痺れて意識が薄れてきて、立ち泳ぎで足で水を蹴る力も失い、溺れて沈んでしまいました。

沈みながらライフセーバーに向かって右手を振り、一刻も早く来てくれないかな、と祈っていました。これはやべえな、と思いながらさっきライフセーバーの方に「大丈夫です」と言い切ってしまっていたことを後悔しました。

波に揺られて沈んだり浮かんだりしているうちに、レスキューボードに乗ったライフセーバーがすごい勢いでパドリングしながらこちらに向かって助けに来てくれたのが見えて、ああ助かった、と思いました。ボードに引き上げてもらい、無線でジェットスキーを呼んでもらい、ジェットスキーの後部のマットに乗せられて砂浜に引き上げられ、すぐにメディカルスタッフのいるテントに担ぎ込まれました。

とてもひどい顔色をしていたようで、すぐに横になってパルスオキシメーターで血中酸素濃度を測ってもらったら87%。コロナの重症患者かどうかの判断でも90%割るか割らないかぐらいなので、相当低い数値です。

コロナでしばらくレースが開催されず、その間に筋トレをしていたせいでウェットスーツがきつくなって呼吸が浅くなり、久しぶりのレースの緊張もあって過呼吸になって体が痺れて溺れたのではないか、と自分では思っていたのですが、お医者さんに聞くと過呼吸の場合は血中酸素濃度は100%近くになるはずだそうです。

慣れた試合だったのでパニックになったわけでもなく、前日に飲み過ぎたり風邪引いたりして体調悪かったわけでもなく、結局なぜ溺れたのか、理由は今でもわかりません。

ですが一つ言えることは、意識のあるうちにリタイアしようと判断できてよかった、ということです。「こんなはずはない」と思って無理し続けていたら、急に意識を失っていたかもしれません。海の中で下を向いたまま意識を失ってしまえばウェットスーツの浮力も意味がありません。

素早く対応してくださったライフセーバーの方々と、メディカルスタッフの方々には本当に感謝しています。

溺れた理由がわかれば、次回から溺れないように気をつけることもできるのかもしれませんが、なぜ溺れたのかがわからないとまた次回溺れそうで怖い、というのが正直な気持ちです。

これまでの最長レースはハーフアイアンマンで、いつかはアイアンマンレースを完走したいと思ってはいたのですが、人さまにご迷惑をかけてまで命がけでやる必要があるのかと思い、しばらくトライアスロンから離れることにしました。

トライアスロンのレースに出始めたのは2013年。そのおかげでこれまで大きな病気もせず、フルマラソンもサブ4で走れるようになり、毎年石垣島や宮崎、村上でレースに出るのを楽しみにしてきました。トライアスロンを始めたせいで自分の働いていた業界以外の新しい仲間がたくさんできたことも大きな財産になりました。

気温35度近い灼熱の徳之島の大会で、真夏の日差しと湿度に悩まされながらなんとかハーフアイアンマンを完走したことで、仕事でどんなに厳しい状況に立たされても「あの苦しいレースをやりきったのだから、これぐらいなんということはない」と自分を鼓舞しながら乗り切ることができました。


ですのでトライアスロンに出会えて良かったと今でも強く思っています。そして今トライアスロンに打ち込んでいらっしゃる方たちを私は今もリスペクトします。

私の体験からみなさんに一つお伝えできることがあるとすると、「想像もしていなかった時に突然溺れることがあるから気をつけて」ということです。

 

これまでこのブログをご覧くださいましてどうもありがとうございました。