自転車操業一筋42年

世の中の「意識高い系」トライアスリートについていけない泳ぎがヘタで意志が弱いサラリーマン、永遠の42歳後厄、が初フルマラソン完走後3年でアイアンマン70.3のフィニッシャーに。フルマラソンサブ4達成後の次の目標はOD3時間切りです。

健康なトライアスリートが溺れる理由その2 過呼吸

トライアスロン、あるいはオープンウォータースイミングに対して過剰に恐怖心を抱かせる目的で書いているのではなく、ある程度の基礎知識があれば落とさなくてもいい命もあるに違いない、と思って水泳の苦手な私が調べたことをまとめております。悪しからず。

 

健康なトライアスリートが溺れる理由その2は、過呼吸だ。

 

過呼吸のメカニズムを簡単にまとめると以下の通り。

空気中の二酸化炭素量は0.03%だが、吐いた息には4%程度含まれる。何らかの理由で過度の呼吸が行われると、体内の二酸化炭素が過剰に排出されてしまう。血中の二酸化炭素濃度が下がりすぎると、いわゆる「古い」脳(=動物的な脳)である延髄は呼吸を止めて、過剰な二酸化炭素の排出を止めようとする。しかし「新しい」脳(=人間らしい脳)である大脳皮質は息苦しさを感じて呼吸を促す。するとさらに過剰な呼吸が行われて二酸化炭素がさらに過剰に排出される、という悪循環が起きる。

二酸化炭素イコール「老廃物」というイメージがあるかも知れないが、二酸化炭素はカラダにとって不可欠なもので、血液中の二酸化炭素濃度が下がると、手足のしびれ、筋肉硬直、頭痛、眩暈などが生じ、最悪の場合は心肺停止に陥る。当然スイム中にこれらの症状が起きれば溺水につながる。

 

トライアスロンではレース前の緊張で無意識に大きく速く呼吸をしてしまうことが多い。以前も書いたが、村上春樹氏の「走ることについて語るときに僕の語ること」にも彼の過呼吸の経験が書かれていて、彼は意識して控えめに呼吸をし、手のひらで口を覆って酸素を取りすぎない(=相対的に二酸化炭素の血中濃度が下がって悪循環が始まる)ことでそれを克服した。

過呼吸の克服には、意識して息を吸う時間よりも長い時間(=10秒程度)掛けて息を吐くのがいいとのこと。またメンタルな部分も大きいので、オープンウォータースイミングに対する自信をつけることも重要。

 

なお、意図的に深い呼吸を速く繰り返して二酸化炭素を敢えて過剰に排出したら(=ハイパーベンチレーション)、ずっと息をこらえても苦しくならなくなる。ハイパーベンチレーション状態では、運動によって酸素を大きく消耗しているにもかかわらず息苦しさを感じないということが起こって酸欠で死んでしまう、ということもあるそうだ。

 

私も初めてのトライアスロン前日に海で試泳を行ったときに、緊張で呼吸が荒くなって過呼吸になりかかった。いつもなら4ストロークして息継ぎするのに、2ストロークしただけで息苦しくなってしまった。呼吸をゆっくりするように意識したのでパニックにならずに済んだが、過呼吸について知らなければ危ないところだった。